ザ・ホテル　扉の向こうに隠された世界

The Hotel: Inside the World’s Most Exclusive Hotel

　あらゆる組織に経営という仕事は必要である。フランソワ・トゥザーンは、突然ザ・ホテルの総支配人になった。ザ・ホテルは歴史のあるところで、王族たちも好んで利用する。トゥザーンの役割は、少々古びているザ・ホテルの経営を改め、より収益を上げるようにすることだった。トゥザーンは他のレストランやホテルで経験を積み、そしてザ・ホテルに勤めるようになる。一度副総支配人になり、転職した。そしてあるきっかけがあり、ホテルの大株主によって総支配人に指名されたのである。

　ザ・ホテルの客室は一九〇、三四〇人ほどの顧客を迎え、四二〇人の従業員が働く。

　この話は、大きく二部に分かれている。第一部は、韓国の大統領を迎えること。第二部は、クウェートの首長（アミール）がエリザベス女王を招待する晩餐会の企画、提供である。トゥザーンをはじめ、ザ・ホテルで働く人々は、韓国の大統領のことは何も知らなかった。しかし事前に迎えた視察チームとよく打合せ、部屋の内装から提供する料理まで、要求に応えていく。そしてクウェートの首長とエリザベス女王を迎える際には、クウェート側の提案で晩餐のメニューを考える。難題は、名の知らぬ魚である。アラビア語でハモーアという。大勢の人を迎えるため、またあらゆる贅を知っているエリザベス女王に満足してもらうための工夫は、料理の腕を当然として、別のものである。そして、それはきちんと評価された。

　ホテルで働く者はとても個性が強い。それぞれが皆、自分自身が最もお客様のご要望を知り、またそれを叶えることができると信じている。430頁の中に、数多くの役者が登場するため、メモを残したい。

　トゥザーンとマホガニーは、机を並べる仲である。

　ジョン・ウィングローヴはシニア・コンシェルジュである。ホールポーターの長であり、顧客のあらゆる要求に応える。

　アラステアとマイケルは、受付を担当する。

　ロイ・バーロンとクリス・バクスターは保安係。

　ロバート・バッコールトは料理を学び、ホテルのフロント係、調理場支配人をはじめ様々な下積みを経験し、宿泊支配人となった。

　キャロル・ロナルドはエグゼクティブ・ハウスキーパー。

　ミカル・ダンカンは副総支配人であり、トゥザーンが総支配人になってから迎え入れた人物の一人である。

　アダム・ソルターは夜間支配人である。フィリップ・クランゼールは飲料支配人。

　バジル、モハメッド、ムスタファことアブドゥルは、交代で従業員全員の出退勤を記録するタイムキーパーである。

　ローリー・パーセルは主任技師として、あらゆる箇所の修繕をするだけでなく、多くのゲストに合わせて部屋を造りかえる。

　エンゾーとカートはゲストからのあらゆる要求に応えるウェイターである。

　クリスチャン・ホヴァーズは会計主任。

　ダニエル・アズレーはレストラン支配人。マーヤン・レズニックは総料理長、仲間からはシェフと呼ばれる。ウィリアムは宴会シェフで、レズニックに続く。スタンレーはウィリアムのもと、毎年ポテトチップスに最適なジャガイモを選択する。デレックはペストリーシェフ。

　クリスチャンとは、副総料理長の中でいちばんの若手。ホヴァーズとは別人である。副総料理長には、ヘンリーという者もいる。

　ロイ・バーロンとクリス・バクスターは保安係。

　アンドルー・ジャーマンは宴会支配人。アンドルー・ピエロンは情報技術支配人。コンピュータが大好きで、ホテル内で起こるあらゆる事象をコンピュータに入力し、業務に役立てたいと考えている。

　ジョーは椅子張り替え職人だが、国旗の調達も行う。アベルは夜間ルームサービス・ウェイター。ジャネットはリネン室の管理人である。

　サリーは飲食販売コーディネーター。ジョー・ドミンゲスは宴会給仕長。

　オリヴェリア、ハッサン、ロペス、カザルス、プロスペリはウェイター。アイリーンは専属の看護婦。

　ジャビル・ビン・アハマッドはクウェートの首長（アミール）。ゲストの一人である。アミールとのみ呼ばれる。

　ザ・ホテルでは毎朝ミーティングを開き、それから仕事に取り掛かる。夜間支配人のアダム・ソルターは皆と逆で、それから帰途につく。

　ザ・ホテルの目的とは、来場する全ての顧客を主役にし、公平さを保ちつつ、そのサービスを提供し続けることだろう。

邦題『ザ・ホテル　扉の向こうに隠された世界』

原題 ” The Hotel: Inside the World’s Most Exclusive Hotel”

Jeffrey Robinson

訳　春日倫子

1996 原作

1998 邦訳 三田出版会