君主論
米国でMBA取得を目指す時に、必ず読んでおくように、と言われる一冊。前半に君主としての姿勢を論じ、後半に具体的な判断基準を示している。
古代からマキャヴェリが生きていた当時に至るまで、あらゆる歴史の例をもとに解説している。一章あたり数頁で、章ごとにテーマがはっきりしている。各章を読み終わる毎に、次に進みたくなる。
「さて君主は、戦いと軍事上の精度や訓練のこと以外に、いかなる目的も、いかなる関心事ももってはいけないし、また他の職務に励んでもいけない。」「武力のある者が武力をもたない者にすすんで服従したり、武力をもたない者が武力をもつ従者たちに囲まれて、安閑としていられるなどの考えは、筋が通らない。」悪評を恐れたり、人気取りばかりをしたりするのは時間の無駄である。目的は領土と国民の保護と、拡大である。
欲しいものを手に入れるには、誰にも頼らずに、自分の力を使うべきである。「当事者が事業を遂行するのに、他人にお願いしたか、自分でやったかである。援助を求めた最初の場合は、かならず禍いが生まれて何一つ実現できない。逆に、自分の能力を信じ、自力をふるった後のばあいは、めったに窮地におちいることがない。」
また外国の支援軍は、「おおかた招いた側に禍を与える。なぜなら、支援軍が負けると、あなたは滅びるわけで、勝てば勝ったで、あなたは彼らの虜になってしまうからだ。
逆に「かりにあなたの近隣の二人の強者が、なぐり合いを始めたとすれば、」必ずどちらかに与するべきである。結果はこの二人の強者が、あなたにとってこわい存在か、こわくない存在か、によって分かれる。かりにこの二人のうちのどちらか一方が自分にとってこわい存在であり、もしあなたが「立場を鮮明にしとかなかったなら、」「勝利者は、逆境のときに助けにならない怪しげな者を味方にしたがらない。かといって敗者の側も、すすんで武器をとって自分たちと共に命運を賭けようとしなかったあなたなど受け入れてはくれない。」二人の強者がどちらもあなたにとってこわくない場合、「彼らの一方を支援することで、この機会にあなたが他の一方を滅ぼしてしまえるからだ。なおかつ、支援したものが勝てば、あなたの意のままになる。あなたの支援があったらばこそ、勝ち戦が可能になったのだ。」
もともとこの本に触れられている歴史を詳しく知っていると、より楽しく読めるだろうと考えられる。また他の書評、抜粋だけでもためになることは間違いない。
君主論
Niccolò Machiavelli
池田廉 訳
1513 原作
2001 邦訳
中公クラシックス