大地

 物語は王竜(ワンルン)の結婚の日から始まる。家は老父と王竜の二人だけしかいなかった。その日、彼は地の豪族の黄(ウォン)家の奴隷女、阿蘭(オーラン)を妻として家に迎え入れた。彼女は、大飢饉の時に黄家に売られていた。王竜は生まれた時から畑を耕してきた。当時、中国に阿片(アヘン)が入り込んできたころ。王竜が畑仕事に精を出している間に、黄家の塔夫人は阿片の煙管(キセル)を燻らしていた。作物の出来は天任せだが、倹約に勤め、穀物を売って得た銀を新しい土地を買うのに充てる。新しい土地は、主に既に耕されていた、黄家のものから購入していった。王竜は字が読めなかったが、息子を学校に行かせ、市場で穀物を売る時に騙されないようにした。

 本書は、パール・S・バック氏の次の三部をまとめたものである。大地 (The Good Earth, 1931)、息子たち (Sons, 1932)、分裂せる家 (A House Divide, 1935)。筆者は女性だが、主人公は親、子、孫まですべて男で、そして男の考えのくせをよく表している。親と孫はよく苦労する。子はそうでもない。

 王竜は苦労し、ひと財産作った時に、一緒に働いてきた阿蘭を家に置いたまま、新しい女を呼ぶ。阿蘭は王竜の正妻としての誇りを決して失わない。「あたしはみにくい女でした。けれども、息子を生みました。この家に、りっぱなあととりを残したのです」

 王竜の三男、王三は「父が梨花(リイホウ)をめかけにしたと知って、家をとびだした。そして南方へいって、」ある将軍の部下になった。やがて仕えていた将軍から独立し、軍閥となっていく。彼は若いころは、革命のための理想が高く、部下を厳しく訓練させていた。「部下は彼のことを、王虎(ワンホウ)とよんで、尊敬しながらも、ひじょうにおそれるようになっていた。」

 王虎の動機は、新しい時代の流れに沿っていた。しかし、数十年早かった。革命の必要性が叫ばれるようになったのは、王虎の息子、王淵(ワンユァン)の時代になってからであった。王淵は父と決して打ち解けなかったが、王虎の勧めに応じ、南方の軍事学校に行くようになる。王淵は学校で、父の立場は地方の小軍閥であり、国家の反逆者である、と教えられた。王淵は父を守るため、革命軍に入ることもせず、憂鬱を保持したまま、モラトリアムに入る。

 19世紀から20世紀にかけての、中国が変化する様子を事細かにあらわしている。

大地 少女世界文学全集 22

Peal Buck

藤原てい 訳

1967

偕成社

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